kaigo FIKA導入第一号施設三幸福祉会 癒しの杜ハウス文京関口 柳沼施設長インタビュー

Uncategorized

人材の定着を支援する人材育成ワークショップ「kaigo FIKA」(カイゴ フィーカ、)。「kaigo FIKA」は、住友商事の社内起業制度「01チャレンジ2019」の採択案件です)このFIKAはスウェーデンの伝統文化で、ティータイムにお茶やお菓子をとりながら、リラックスした雰囲気でコミュニケーションすることを指します。いわば「お茶会のようなミーティング」をオンインライン上で実施することで、コミュニケーションが不足しがちな職員同士のチームアップを促進するのが狙いです。ここでは、実際に「kaigo FIKA」(以下、FIKA)を導入した『三幸福祉会癒しの杜ハウス文京関口』(東京都文京区)の柳沼亮一施設長にお話を伺い、その可能性を探ります。

職員間の不協和音が退職につながる

――FIKAの実践をうかがう前に、介護業界の現状をお聞かせください。

超高齢社会を迎えた日本では、介護人材の確保や育成が待ったなしの社会問題です。このままいくと、2025年には介護者が34万人不足する。そこには勤続3年未満の離職率が高いという構造的な問題があると言われています。喫緊の課題を教えてください。

柳沼施設長(以下柳沼) まず挙げたいのが、職員間のコミュニケーション不足の問題です。ご存知のように、介護の現場はシフト制です。早番、遅番、非番がそれぞれ組み合わされて動くので、自分の次に勤務する人と直接顔を合わせる機会がありません。そこで、手紙やメモ、日誌的なものでレスポンス(伝言)を残します。ところが、付箋などに書いてどこかに張り付けても、はがれ落ちてどこかにいった、他の書類とまぎれてしまい担当者に渡らないといったことが起きてしまうのです。また、日頃のコミュニケーションが不足している状況では文章でレスポンスが誤解を招く事が多くあります。

――直に顔を見て引継ぎできなければ、深刻な問題が放置されることもあるのではないでしょうか。柳沼 以前私が体験したのは、やはり職員同士の感情のすれ違いですね。ある介護職員が「これは、ご入居者様の為にシステムを変えたほうが良い」と思い連絡簿にその旨を記入しました。半月以上先の会議まで待たずに直ぐに問題提起をすることは、とても良い事です。しかし、文章が少し強めだったようで誤解を受けてしまい人間関係がギクシャクしてしまったようです。その後の会議も私用が重なり出席ができず、誤解は深まるばかり、実際に本人から相談も受けました。次の会議には出席することができ関係は修復されました。文章は相手に与える印象が様々です。しかし、シフト制である以上通常のサラリーマンより文章でのレスポンスは多くなります。それ故に、日頃のコミュニケーションでお互いを理解することが重要となります。その際は、すぐに誤解は消えましたが、長引くと職員間の不協和音から退職に繋がる可能性もある大きな問題です。

三幸福祉会 癒しの杜ハウス文京関口施設長 柳沼亮一さん

――改善されていないとご家族からクレームもきますね。そうなると職員間もギクシャクしますね。

柳沼 クレームが入ると、レスポンスを聞かされていない職員は混乱します。まずは、状況の確認をしなければなりません。質問の中には、受診内容や日々の症状(持病の事など)その場では状況を知らないと即答しにくい内容も多くあります。業務の性質上、責任の所在をハッキリさせる必要性があるものも多く(責任を取らせるためではなく、確実に改善をするため。)安易に返事がしにくいのです。仮に上司と引き継ぎ事項を共有していたとしても、上司もシフト制なのですれ違いが起きることもあります。こじれて問題が大きくなってから本人に「どうして知らせなかったのか?」と突き返すので、「私は引き継いだのに」と混乱します。1フロアごとで何人かの塊で動いているため、一度関係が崩れるとより一層コミュニケーションが難しくなります。

――今の時代、どんな業務にも円滑なコミュニケーションが求められますが、介護はセンシティブなだけに一層必要ですね。

柳沼  そもそも、介護という仕事は、食事、排泄、入浴やレクリエーションなどがあります。マニュアルは存在しますが、細かい内容はその場で個々の職員が組み立てます。話を聴きご入居者様の状況を把握しながら、サービスを組み立てます。完全オーダーメイドのサービス内容を即座に構築するのです。自由度があり、ある意味創造的な仕事である一方、孤独な部分もあります。マニュアルに縛られると画一的なサービスになってしまい個別性が大幅に下がります。

――なるほど。コミュニケーション不足によって人間関係を悪化させ、孤独感を深める。メンタルに不具合をきたす。そうなると辞めたくなりますね。

柳沼 介護業界の人手不足は「給料が安いからだ」と報酬の問題にされがちですが、実際に調べるとすべてがお金の問題ではありません。勤務年数で退職した原因はかなり違います。若手は、利用者さんとの関係や、ひとり夜勤の不安。看取り不安などが大きく、ベテランになると「自分のやりたいことが形にならない」と言って辞めていく人が多くなります。同期が辞めると、私も、と連鎖する。そうやって勤務する施設をどんどん変わっていけば、賃金の昇給が実現しないのでその方のお給料は上がっていかない。本人の満足度は上がらないし、雇用する施設側も採用するためのコストがかさんでしまいます。

リラックス効果がもたらすもの

――つまり、コミュニケーション不足が、介護現場のさまざまな問題につながっているわけですね?

柳沼 その通りです。若手の不安や悩みを中堅やベテランが聴いてあげれば、ほとんどのことが解決できます。ベテランの方は自分の経験や知見を伝えたり、それを掘り起こしていく手伝いができるはずです。そうすれば離職者も減ると考えます。新しい介護の職員を増やすのも大事ですが、既存の職員が定着しやすい環境を作ることも重要だと感じます。

楽しそうに話をする介護職員たち

――そういったことを解決できる場所がFIKAなのですね。柳沼さんが施設長を務める現場で2020年6月から導入されたと聞きました。株式会社御用聞き(東京都板橋区)代表の古市さんが、実証実験のファシリテーターです。どんな効果がありましたか?

柳沼 本格的な導入前、30分だけテストでFIKAやりましょうと、古市さんがファシリテーター役になり何人かの職員でテーブルを囲んで話しました。そうすると、それまでほとんどみんなの前でしゃべったことのない若い職員が、ベテラン職員ととても楽しそうに話すのです。「こんな悩みがあるんだけど」と、違うフロアの職員に質問していました。ベテラン職員が「うちはこうやったら良くなったよ」とアッサリ解決法を教えてくれて。同じ施設なのに、悩んでいることが他の階では解決済みだった。これをオンラインでやれば、課題解決事例を共有することもできるんだと思いました。

――「ティータイム」という空間がリラックスさせるのですね。

柳沼 回を重なるごとに、職員はどんどん発言してくれるようになりましたね。お茶を飲んで、お菓子をつまみながら。夜勤明けの職員はおなかが空いているのでもぐもぐおにぎりとかを食べながら、参加しています。オンラインなら「シフト制の壁」を難なく乗り越えられるんだと思いました。みんなが集まれる日時を指定できるので、同じ日に集まれない、明けの日は帰らなきゃいけない。入りの日は遅く来る。よって話ができないという壁ですね。

――若い人はオンラインなら話しやすいという人もいます。仕事へのモチベーションも高まります。

柳沼 一般職、リーダー職、主任職といった階層にかかわらず、対等に話し合える気がします。介護職の経験が1年目、2年目でも施設のために発案しようとする。さまざまな意見や悩みを共有し、みんなで考える。そうすることで、みんなが仕事に前向きになれていると感じます。

――施設長としても、個別に「問題はありませんか?」と尋ねるよりも課題解決に結びつく実感がありますか?

柳沼 そうですね。個別だと、みなさん「大丈夫です」と大体おっしゃいます。本当は大丈夫じゃない。「大丈夫です」は「無理です」ということが、おうおうにしてある。そして自分の究極まで我慢する。問題や悩みを明かすときは、すでに辞める覚悟で「さあ、言うぞ!」みたいな。そうではなく、会社側も率直に言ってもらったほうがいい。

プロ・フィッカーを介護のキャリアパスに

――ワークショップを受ける職員さんへはとてもいい影響があるのですね。さらに一方では、FIKAを実施する際にファシリテーターを務める「プロ・フィッカー」の育成も予定されています。FIKAをする際に意見を促したり、チームアップを支援する役割ですね。

柳沼 私たちはこのプロ・フィッカーを、ベテラン職員の副業的な仕事、ポータブル・スキルとしてとらえています。能力の高い現場の主任さんを、施設や会社の中で出世させてあげたいと思っていても、本人は「現場にいたい」とこだわりを持っている方が実は非常に多いのです。しかしそうなると、現場で給料を上げるポジションがありません。広報や総務といった他の部署はありますが、介護の現場にキャリアパスの種類が非常に少ないのが現実です。事実、ケアマネの資格を取っても、ケアマネは要介護者100人にひとりという配置です。それを超える配置は人件費の関係上難しいです。能力はあるのに活躍の場がない。施設のなかでは制約がある。では、その施設を飛び越えて職業として誰かの役に立てたらいいよね、ということです。

――新たな職種、副業になりうるわけですね。では、このプロ・フィッカーにあるには、どんな能力が必要ですか?

柳沼 みんなの声を引き出し、まとめる。ここの気持ちに寄り添う。ファシリテーター的な能力が必要です。この力は、ベテランの介護職員の方はかなりの方が持ち合わせています。ポテンシャルは高いので、研修を受ければさらに向上するでしょう。プロ・フィッカーを担うことで、自分は誰かの役に立てるのだという自己承認欲求も満たされ、いきいきと働けるようになるでしょう。そうすると、間接的に離職率を下げることにもなり得ます。

 

入居者と談笑する介護職員
今すぐにKaigoFIKAを無料体験しましょう。
初回研修はトライアルとして無料で試すことが出来ます。

研修は1回1万円ですが、その前に
初回研修は無料で体験できるので、この研修の良さを実感してから課金サービスへ移ることが出来ます。

無料で研修を体験する
  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


関連記事一覧

関連記事はありません。